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Thursday, July 18, 2013

投票所での投票時間短縮の問題

ジャーナリストの石川智也さんから頂いたメールを紹介します。石川さんは新聞記者で、投票所での投票時間短縮の問題について取材されたそうですが、紙面の都合で短い記事しか掲載できなかったそうです。しかし、この問題はとても重要です。以下が、石川さんが本当は紙面に載せたかった内容です。ブログ等で拡散してよいとのことですので、ここに掲載します。

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今回の参院選で、投票終了時間を公職選挙法で定められた「午後8時」から繰り上げる投票所が、全国でなんと35%もに及んでいます。これは1998年に投票終了時間が午後6時から2時間延びて以降、最高の割合です。繰り上げは本来は「特別な事情」がある場合に限られた例外措置ですが、人手不足や経費節減を理由に、国政選挙のたびに動きは広がる一方です。一票を投じる権利が遠ざかっている、そういってもよい事態ではないでしょうか。

 今回、繰り上げを実施するのは、全国4万8777カ所の投票所のうち1万6960カ所。過去最高の比率というだけでなく、数でも、1998年以降で最多です。
 福島県は全1314カ所の100%が繰り上げ。群馬県は943カ所中934カ所(99%)、鹿児島県は1246カ所中1139カ所(91%)、高知県は928カ所中832カ所(90%)……と続きます。

 ちなみに、公選法40条は投票時間を午前7時~午後8時と定めていますが、「選挙人の便宜のため必要があると認められる特別の事情のある場合又は選挙人の投票に師匠を来さないと認められる特別の事情のある場合に限り」開始時間を最大2時間前後でき、終了時間を最大4時間繰り上げられます。時間変更には2000年までは都道府県選管の承認が必要でしたが、地方分権一括推進法の施行で、市町村選管の判断のみで可能になりました。総務省は各都道府県選管を通じ、毎回「有権者の投票機会の制限につながりかねない措置には慎重な対応を」と要請していますが、繰り上げの動きは全国でなし崩し的に広がっています。

  繰り上げ投票所の割合は、98年参院選では全国で6%でした。以降、2000年衆院選9%、01年参院選15%、03年衆院選20%、04年参院選22%、05年衆院選24%、07年参院選29%、09年衆院選30%、10年参院選31%、12年衆院選33%と国政選挙のたびに拡大、数も98年の2966カ所から増え続け、今回は上記のとおり、1万6960カ所です。

 自治体にじっさい、繰り上げの理由を聞いてみました。多くの市町村は、2003年に導入された期日前投票の定着で、早めに投票する有権者が増えていることや、夜間の投票実績が少ないことを理由に挙げます。早めに投票を閉め切ることで、連動して当日の開票作業が早まり、場合によっては深夜に及びかねない職員の負担と人件費を減らせる利点を挙げる市町村も少なくありません。

 茨城県では今回、繰り上げ投票所の割合が74%と、昨年の衆院選時の54%から大幅に増えました。県南部の取手市は東京への通勤通学者も多い都市圏ですが、今回新たに全54カ所で2時間繰り上げを実施します。市選管は、期日前投票の定着や夜間の投票者の少なさという「定番」の理由に加え、「投票立会人や職員の負担軽減はもちろん、他自治体の動向も勘案して判断した」と説明します。茨城では今回、全44市町村の8割近い34市町村が繰り上げを実施します。さらに、経費節減も大きな理由といいます。繰り上げと開票前倒しで、人件費を110万円削減できる試算とのことです。

 福島県は昨年の衆院選に続き、繰り上げ投票所の割合が100%となりました。10年参院選時は69%でした。県選管は、投票機会の確保に努めるよう、市町村選管に度々要請していました。繰り上げの理由としては、やはり、期日前投票の定着や夜間投票者の少なさ、職員らの負担軽減などの理由が大半です。しかし、浜通りの市町村からは、震災による人手不足や、夜間は緊急時に避難誘導が困難になる、といった理由も挙がりました。いまだに地震が頻発し、福島第一原発事故も収束したと言えないなかで、緊急時に対応できる対応が確保できない、といった理由は、確かに切実な問題だと納得させるものがあります。

 繰り上げには自治体個別の様々な事情があり、もちろん「けしからん」と一刀両断できる話ではありません。投票所ごとに2人以上設けなければならない投票立会人の確保は、じっさい、多くの自治体で年々困難になっているようです。いつも決まった人に頼まざるを得ず、高齢化もあって負担が高まっているのも事実でしょう。農村部などでは、立会人を事実上紹介している自治会側の負担軽減の要求も少なくないと聞きます。

 ただ、投票時間が午後8時までに延ばされたのは、投票率の低下に歯止めをかけるためだった、という経緯があります。総務省は、繰り上げには「不都合がないというだけでなく、有権者の利益になる積極的理由が必要。期日前投票を行っていることだけでは、理由にならない」との見解です。本当にやむにやまれぬ「特別な事情」があると言えるのか、投票する権利を行使できる場の確保に努めているのか、安易な対応をしていないか、検証は必要でしょう。

 さらに重要なのは、投票時間の短縮だけでなく、投票所そのものの統廃合も進んでいる点です。

 98年衆院選時の5万3439カ所から減少の一途で、昨年衆院選で4万9214カ所、今回参院選では、上述のとおり4万8777カ所にまで減りました。やはり、人手不足と、投票立会人の確保困難などが理由です。総務省は、最寄りの投票所まで3キロ以上離れている場合や投票区の人口が3千人以上になった場合に投票所を増設することを通知で要請していますが、終了時間の繰り上げ同様、投票所数を決めるのも市町村選管の権限です。

 繰り返しますが、すべてひとくくりにして「安易な対応」と断罪するつもりはありません。職員定数削減の圧力もあり、平成の大合併で投票区の人口バランスが崩れたり開票所が遠くなったりといった事情も、もちろんあります。しかし「それはそれとして」、投票機会の確保に努めなければならない、というのも、一方の真理でしょう。もし、行政の効率の論理を主理由にこうした対応を行っているとしたら、コストをかけて「選挙」というシステムをあえて維持している民主主義の本旨から、大きく外れていると言わざるを得ません。税金を使って投票率向上の啓発活動をしながら経費節減を理由にするのも、理屈に合いません。「一票」への機会が少しずつ遠ざけられている・・・それほど軽く見てよい事態ではないはずです

ジャーナリスト 石川智也


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